あなたの "ねーさん" になったげる。

「ねーさん、おはよ。」

「明日からまた二課に帰っちゃうんだよね」

「一週間だったけど、送別会しようか、ねーさん(笑)」


一課での最終日。


営業のみなさんにはとてもよくしてもらって、

本当に助かる。

けど、ここでの仕事は今日でおしまい。


さあ、明日は自分の持ち場へ帰る。

思えば、篠原さんとは明日、初めて仕事するんだよね。

いろいろ気になるけど、まあやるしかない。


「ねえさんねえさんて呼ばれて、ねえ、いい気分?」

…お局様的な方から、敵愾心まるだしのイヤミが。

ひえー怖い。明日から二課でよかった(笑)


「昨年秋の飲み会から、そう呼ばれるんですよ、皆さんに。

悪い気はしないですが、私より年上の人もねーさんって呼ぶんですよー」

変な汗、かきながら私。


関心を持たれるって、いい事よ、しかも男性に、みたいな、

さらにリアクションに困るようなご意見を賜り…。

だってこの方、五十代おひとりさま女子なんですもの(笑)


よけいな摩擦が生じないように、大人しくしてなきゃね。


夕方、営業の皆さんが帰社してくる。


山中君を呼び止めて。

「山中さん、ちょっとお願いがあるんだけど・・・聞いて」

印刷室のそばだったから、ちょっと部屋の中に入ってもらって、ふたりだけ。

少し怪訝な顔してたけど、笑顔でついてきてもらった。


「あのさ、私のことみんなで"ねーさん"って呼ぶの、業務中はやめてもらえないかな?」

「あ、いやですか。すみません」

ほんとに済まなそうな顔して、山中君。


「全然イヤじゃないけど、私だけニックネームだと・・・。ほら、女子は特別感出されるとたしかにうれしいんだけど、それが自分じゃないと機嫌悪い生き物なのよ(笑)」

「あー、なるほど、嫉妬・・・」

わかってくれてよかった。


「呼ぶなら、女子全員にあだ名つけて呼びなよ、って意味だよ」

「そうですね。みんなにそう伝えます」

「ありがとう、助かる」

彼の二の腕にすがって、さりげなくボディタッチも(笑)


印刷室から出ようとすると、急に立ち止まって、山中君。

「でも、定時過ぎて今みたいにふたりだけだったら?」

え? 

「…あー、いいよそれなら。あなたの"ねーさん"になったげる(笑)」

「いえ、"ひかりさん"って呼びます。いいですよね?」

私の返事聞く前に、山中君、印刷室出てった。


「……」

うーん、何だか。


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