(前回より続きます)
お部屋は、ベッド以外の空間は
マサコさんとワンちゃんで半々。
大きなケージが置いてある。
マルチーズが二匹。かわいいねぇ。
どっちがマコで、どっちがカコ?
「このね、耳の付け根が少し黒ずんでるのがカコ。」
…わかんねーし(笑)
「先にご飯食べようよ。」
マサコさんが部屋着に着替えて戻ってきて。
「ううん、お願いしてあった書類出してくれればすぐ終わるから、お先にどうぞ。」
プロバイダ情報とか書かれた書類をお借りする。
「お父様お母様はネット使うの?」
「するわけないじゃん。」
「じゃあこのお部屋だけ信号が届けばいいね。」
今回、マサコさんが自分で買ったのはアクセスポイントにして、
メインの無線併用のルーターをそのまま活かして設定しよう。
このお部屋の扉は締めちゃうだろうから、2.4GHzで設定したほうがいいかな。
30分以上もかかっちゃったけど、iPadで動画を再生して見せてあげて、終了。
「すげー大野ちゃん。なんでこの人がお嫁に行けないんだろ(笑)」
wi-fiの知識があれば結婚できんのかーい(ルネッサーンス笑)。
あとで逆襲するから(笑)
買ってきたのあっためて、お酒あけて。
お疲れ様。さ、飲もう。
最近の社内の話題で盛り上がる。
とくに、経理課はいま、どうなのって。
「べつに何も変わりないね。」
「相変わらず若い子たちの輪に入れず?(笑)」
逆襲試みてイジる。
「それ、あんたもだったでしょ?」
そうだけどさ(笑)
ふたりで大笑い。
「木村さんは、早退することもある?」
「ここまで2回あったかな、お子さん具合悪くなったとかで。でもそんなに影響はないよ。ウチの部署、ガチで忙しいなんて月の二、三日じゃん?」
そうだね。営業事務のままだったら、キツかっただろうけどね。
いま逆の立場になったけど、彼女と私では、背負ってるものが全然違う。
身軽な私は、激務でOKだよ。だから木村ママ、がんばって。
「…大野ちゃん、いつもそんなに飲むの?」
気づけば、チューハイ350ml缶が2つ空き、持ってる缶もすでに軽い。
しかも短時間で!
しまった。いつもの調子でいっちゃった!
「…あー、なんかマサコさんのお部屋、落ち着いて居心地よくて、ついついお酒も進んで。でも飲みすぎだよね。」
「明日もまだ休みなんでしょ。泊まってっていいよ。酔っぱらってフラフラ帰られたら心配だよ…。」
これっぽっちの量では酔っ払わないんだな、これが(笑)
マサコさんのお部屋は、ホントふつう。
アイドルのポスターとかあると思ったのに(笑)
小さなフォトフレームに犬の写真。
やっぱりマルチーズ。
以前飼ってた子の写真だって。
ずいぶん遅くなったけど、
お泊りは丁重にお断りして、ご両親にお声かけして、辞去。
マサコさん、そこまで送るよって。それも断って。
まだ30℃近くありそうな夜の外気は不機嫌を誘い───。
最寄り駅まで、歩いた。
何だろ。この気持ち。
マサコさんの私生活は、普通だった。
アラフォー独女でも、それなりに幸せそうな。
ご両親もお元気そうで。
ふと、木村さんのことも思い出す。
幸せの容積って、人によって、そんなに変わらないんじゃないのかな。
もし今夜、マサコさんちを訪問してなければ、
私は今まで通り、彼女をちょびっと憐れんで、蔑んで、軽く見て、だったかもしれない。
でも、そこまでではなかった。
木村さんの私生活が必ずしもキラキラ輝いていなかったように、
マサコさんの日常も、べつに普通で、見下す要素なんてなかった。
私は、人にどう思われるか、気にしない人だと
自分では思っていたけど、
こうして振り返ると、必ずしもそうではないのに気づく。
こんなにも、人がどう生きてるか、気になるんだから、
人から見た自分がどうなのかって、ほんとは絶えず気にしてるはず。
自覚はまったくないけど、そうなんだろね。
でも、
そんなこと、ほんとはどうでもいいことじゃん。
人は自分軸で生きてゆけないと、
自分の人生を生きていく意味がない。
そうでしょ? ねえマサコさん。
