それでも、 彼の元から一刻も早く遠ざかりたかった。

(前回から続きます)

またシャワーを借りて、身支度。

着てきたコートも羽織って。


「電車なくなるから、帰るね」

「え? もう遅いから(泊まれば?)・・・」

自分の部屋だから、ベッドでたばこ。


「母が心配するから・・・。ごめん。プレゼント、ありがとう」

「・・・送ってくよ、そこまで」

「いいからひとりで大丈夫だから!」

彼の言葉を遮って、

少し語気が強くなって吐き捨てた。


扉を閉める寸前、

「ちぇっ、何だよ」

と、彼も吐き捨てるように言ったのが聞こえた。

その瞬間、何かが、がらがらと、

崩れ落ちるような感じを覚えた。


外は刺すように冷たかった。

しかもここがどこだかよくわからない。

それでも、

彼の元から一刻も早く遠ざかりたかった。


あてもなく、なんとなく賑やかな方向へ歩くと、

駅があった。

ふた駅で、通勤で通りかかる大きな駅に着いた。

乗り換えて、自宅の最寄り駅までと思ったが、

もう終電が出たあとだった。

ずいぶん並んでタクシーに乗り、自宅へ帰りついた。


翌日。

ほとんど眠れないまま朝に。

もう、相当に浮腫んでひどい顔だったと思うけど、

構わず出勤した。

こういう時、マスク、役に立つよね。


その途中、電車の中で、

今日、彼が年末のご挨拶に来ることを思い出した。

 

午前中、他の営業の方ふたりと、上司の方と4人で。

彼と目が合ったが、

少し会釈してすぐに自分の仕事に戻った。


彼も伏し目がちで頭を下げた。

奇しくも、彼と親しくなる以前の

彼にすっかり戻ってしまったよう。

そうだよね、白紙に戻った、

ってことだよね。

 

 気まずい?

 

ううん、むしろ清々しい気分。

あの人はもう過去の人なの。

私にとって。


「女性の恋は上書き保存」って、

 なるほどね。

 

 上書きしてくれるひと、

 現れるかな。


ごめんね。

私もずいぶんな女だと思うけど、

でもべつに、

まだ付き合ってもいなかったし。

思い通りになったんでしょ、

ゆうべは。

それでおあいこ。


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