(前回から続きます。)
あとはタクシーに乗って、知らない道通って、
彼の住むアパートへ。
何かいろいろ聞かれたけど、うん、うんと、
生返事ばかりしてよく覚えていない。
覚えているのは、
彼がずっと私の手を握っていたのと、
コンビニの近くでタクシーを降り、
買い物をしたこと。
いろいろ買い込んで、彼の部屋へ。
もうずっと憧れていた、
ステディな恋人達の
「ルーティン」みたいなひとコマだったけど、
もう苦々しい記憶に染まりきって、
振り返り、思い出すのも苦痛でしかない。
あとは、シャワーを浴びているとき気づいた、
バスはきれいに掃除されているようで、
すみのほうは汚れていたこと。
男性の一人暮らしなんてこんなものか、と
思ったが、この時のために
一生懸命掃除したのかもしれない。
そう思うと、あらためて
彼の本性を垣間見るようで、
さらに嫌な気分になった。
彼の、懸命だが、ぬくもりの感じぬ愛し方に、
可笑しさと虚しさが同時にこみあげてきて、
何度も両手で突き放そうと思った。
が、ここ何年も乾いたままの身体は、
それを拒むことができなかった。
(次回に続きます。)
