私も、そんなに優しくは、ないよ。

お昼休み。


社内食堂で食事、休憩。

あ、マサコさんと木村さんだ。


「お疲れさま。となり、いい?」

どうぞどうぞ、って木村さん。

並んで座る。ありがと。

マサコさんも、しばらくぶり。


「もう一か月だね。そっちはどう? 木村さん」

「う~ん、ようやく板に付いてきた感じですね。(マサコ)さんにもお世話になりっぱなしで」

「(マサコ)さん、優秀だからね(笑)」

減らず口叩かれる前に、先制攻撃。


「大野さんこそ、すっかり営業事務の主任としてバリバリがんばってるって、評判ですよ」

木村さんからお褒めの言葉。

「あと、女子力高くてあざといのはタチが悪いって、男子社員の間でもっぱらの評判」

マサコさんが逆襲してきた。

誰が言うのよ、それ(笑)


三人で大笑い。


「なかなか仕事覚えられなくてねぇ。篠原さんのほうが全然優秀だよ」

ひと呼吸、微妙な空気が流れる。

木村さんの耳にも達してるんだよねきっと、

篠原さんのこと。


「佐藤さんとか、大島さんとか、若い子にはいろいろ厳しいんで。仕事以外でも…」

木村さんが少し声をひそめて。

やっぱり、以前からそうなんだよね。納得。

だから、一方的に篠原さんが悪いわけじゃない。


それでも、篠原さんの旗色は悪い。


誰かが声高に叫んだことが、やがてチームの総意になる。

それが誤りだったとしても。

それが悪意に満ちていたとしても───。

そして、

人がどう思われていようと、皆、あまり関心がない。

だから、誰かの強い意見に、流されてゆく。


そんなことは、あってはならない。

そんなんじゃ、チームとして、すでに崩壊している。


もちろん、篠原さんにもおおいに反省点はある。


彼女の行く末が、私が辿ったかもしれない苦渋の未来にならぬよう、何とかしたい。

それは、彼女を特別に思っているから、とかじゃなく、

リーダーとして指導しなきゃ、とかでもなく。

自分が味わったかもしれない困難を、今さら彼女を通して見せられたくない、

というのが本当のところ。


私も、そんなに優しくは、ないよ。


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