(前回から続きます。)
「お母さん、小島さんそこまで送ってくる。」
玄関を出て、夜道をふたりで歩く。
「今晩は、本当にご馳走様でした。」
「いえいえ、お粗末さまでした。」
「……」
しばらく沈黙。
「大野さん。お母さんの目には、ぼくはどんなふうに映ってるのでしょうか。」
…またなんか、悩んでる。
「母は、小島さんのこと大好きなんですよ。今夜いっしょに過ごして、きっとさらに好きになってしまったと思います。」
うふふ、と笑ってみたものの。
彼に笑顔はなく。
横断歩道の信号が赤になる。
「今日はずいぶんがんばってみたんですけどね。でも無理して飾っても、結局いつかはぼろが出るんだと思います。」
? どういうこと?
「毎日、仕事ではそんなことばかりです。でも、ひかりさんといると、素の、本当の自分でいられるようで、とても落ち着きます。」
まだ、何が言いたいのかわからない。
「先日のお返事も、待っています。…ははは、あれだって、勇気出して、一大決心で頑張ってお願いしたんですよ。」
信号が青になり、
「ここで結構です。明日の仕事、がんばってください。おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
信号を渡っていく彼の背中を見送る。
…そうか。
彼は、自分の至らないところ、弱みを、
自分でよく知っている。
だから今夜は頑張って、社交的で「大人」の自分を
自分で演出していたんだ。
それなら。
これから先、彼は変わってゆける。
見込みがある。
楽しい時間を過ごしていたように思うけど、
彼自身は、ずいぶんと無理してたのかもね。
変わることが、
必要なのかそうでないのか、
よくはわからないけど。
いまの自分に
足りない部分を補おうとする姿勢は
大事なことだと思う。
私もお手伝いするから、
小島さん。
いっしょにがんばろ。
