あなたから篠原さんを守るためだよ。

前回から続きます)

直後、フロア全体がしーん、と。

でもすぐに静寂が破られて。


それは、

誰が叫んで、それが誰に向かって放たれたものか、

フロアの人たちがみな理解したから、なんだろう。


篠原さんも、おののいた顔で私の顔を見据えている。


今まで話さなかったこと───。


なぜ、こんなにもあなたを気にかけるのか、こんなにも激高するのか、こんなにも涙が出るのか。

私も同じ経験をして組織の中で浮いていて、すぐにほっぽり出されて、しかも自分だけが悪いわけではなく、誤解されてばかりで、もう自分では修復することもできずで…。


仕事は毎日のことなんだ。相手の気分次第でその日一日が台無しになるんだ。

それくらい、ダメージを負うんだ。それでも相手が何事もなく笑っていたら、

絶対に許さないと思うんだ。いっそこの手で、って思うくらい追い詰められるんだ───。


ちゃんと伝わったか、自信はないけど。

そんなようなことを、話した。けっこう過激な言葉で。もうほとんど仕事とか関係なく。


正直、彼女のことは好きではないけど、私のあのときのような思いを、他の誰にもさせたくない。

そして、その人が苦しみ、悲しむ姿を「私が」見たくない。それが率直な気持ち。

私だって、そんなに優しくはないよ。

でも流した涙の理由は、本当のところは、自分でもよくわからない。


彼女、私の話をじっと聞いていた。涙ぐんでいるようにも見えた。わからないけど。


…話すこともなくなってしまった。


「仕事、戻ろ?」

「…はい」


何事もなかったように、自分の席に戻るふたり。

まわりのみんなは、とくに私たちを気にかける様子もない。

それは、何が起こったか、想像がつくし、

このあと彼女がどうなるのかは、

今はまだわからない、今後わかるだろうって、

理解したからかな。

そう。もう、彼女次第。どうなるかは。


私が目を泣きはらしているのを見て、大島さん。

「大丈夫? 大野さん。課長にちゃんと報告しなきゃ、ね」

「大島さん。」

たぶん、能面みたいな顔して。視線も合わせず。

「篠原さんのことで何かあったら、まず私に報告してください。適切に指導しますので。」

「そうよね、わかった。ちゃんと指導が必要よね」


違う。

あなたから篠原さんを守るためだよ。

そんなこともわからないの?


それ以降は、二課は何となく静粛な雰囲気。

私のせいなんだろうけど。

篠原さんも普通に業務に就いていた。


いつもと違っていたのは、

篠原さんが残業で少し、残って

仕事していたこと。


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