「ひかりさん、今度ごはん食べに行きませんか、一緒に」
へ?
山中君。今夜も、定時過ぎてから。出し抜けに。
「私と?」
急に言われてもな。
「…えっと、えっとね。」
ほんと、藪から棒って、このこと。
「ん~、私でいいの? なんか、誘う相手、間違ってない? 私? 篠原さんとかじゃなくて?」
「ひかりさんを誘ってるんです。…だめですか?」
うれしいけど、どうする?
年下でも、やっぱり意識してるんだね、私が。
そうでなければ、ガハハって笑ってスルーか、
何も考えずにホイホイついてくよ。
なのに、どぎまぎして。小娘かよ(笑)
「…あ! さてはそれって誰か先輩の人に無理矢理言わされてるんでしょ? 大野を食事に誘ってみろ、とか、誘えるかどうか賭けしよう、とかさ。」
「はい、そうです」
「そうでしょ、やっぱりね …って、本当にそうなの!?」
「はい。横山さんとか三人と賭けています」
なんじゃそりゃあ~!
それ、普通なら思いっきり"引かれる"事案だぞ。
しかも本人に平気でバラしてるし(笑)
「で、負けるとどうなるの?」
「三人に焼肉をおごることになっています」
「勝つと?」
ちょっと逡巡した感じで。
「…大人の素敵なお店へ連れて行ってもらえます」
絶句。
なんか、オネストな感じで言うもんだから。
逆にすがすがしい気持ちに(笑)
「ふうん。…そういうとこ行きたいんだ、山中さん」
「負けるとむこうに三人分ごちそうしなきゃいけないのに、こっちが勝っても三人で一人分おごりは不公平です」
たしかにね。
「金額が釣り合うのは、もうそういうところしかないかと思って」
今の子の考え方?これ。その前に何でもかんでも賭けの対象にしちゃだめよ(笑)
「でも横山さんたちには感謝しています。これでひかりさんと食事に行けたら、それがぼくにとっての"勝ち"です。だから賭けに勝っても何もいりません」
可笑しくて、頭抱え込みながら笑っちゃう。
「…じゃあ、勝たせてあげる。だから皆さんに大金使わせないようにしてね(笑)。」
「はい! ありがとうございます」
「で、なにごちそうしてくれるのかしら?」
「何か食べたいものがあれば、言ってください」
ふふ、何だか楽しくなってきた。
