よけいに、だめ。

前回より続きます)

いや、本当は賭けに勝ってたら、そーゆーとこ連れてってもらえたんでしょ?

よくわからん。


「ふうん…。でも筋トレは続けてるんだ。そうか、自分に自信を持つためって、そういうことか」

「自信はまあまあついたんですが…。なにぶん女性と付き合った経験がなくて、結局この方面の自信がありません。」

そうだよね。モテるために筋トレしてんだもんね。

でもそれじゃ何にもならないねぇ。


「そこはもう、いろいろな人と会って、飲みに行ったりとか、デートしてみたりとか、経験を積むのがいいんじゃないかな」

何か、変な方向へ進んできたな。恋愛相談? 人生相談?


「正直な感想としては、あなたなんで彼女いないの?モテないの?って。じゅうぶんに魅力はあると思うよ。全然魅力ない人が頑張ってもいろいろ難しいのかもしれないけど、山中さんなら全然大丈夫だよ」


彼、ちょっと笑顔になった。


「私と一緒に来た篠原さんは? たしかに山中さんより若い子って、ウチには彼女しかいないけど。」

まあ、でも篠原さんは山本君が好きなのかもだけど。


「だめなんですぼく。年下はとくに。なんか考え方とかすごく違ってそうで。合わないって感じがすごくて」

さっきも言ったけど、まあ、それは同じでよくわかる。

だから同様にこっちも年下はキツいよ。

でも女子が年下って、まあ普通じゃん?


そんなんでお開き。

結局、ワリカンにした。


駅まで歩いて。


お給料出たあとの金曜、なかなかの賑わい。

それでも、飲みの付き合いとか、ノミニケーションとか、

少なくなってきてるんだよね。

山中君と接していると、そんなふうに感じる。

自分にとって意義が感じられないことは、

とことん無関心なんだよね、いまの人。


「週末は何してるんですか」

彼が無邪気そうに尋ねる。

それ、けっこうイタい質問。


「家のこととか。掃除とか炊事とか。休みにしかしないけどね。山中君は自転車?」

「そうですね。明日は湘南の方とか、行ってみます」


若いっていいね。


電車が逆方向なので改札前でさよなら。

でも別れしなに。


「また、誘っていいですか、ひかりさん」

少しまじめな顔して山中君。

だからまじめに答える。

「私じゃなくって、もっと年の近い、彼女になってくれそうな人を誘いなよ。若い日は永遠に続くわけじゃないからね。がんばって」


「ぼくがひかりさんのこと好きでも、だめですか」

「よけいに、だめ。」

彼、落胆の色が濃く影落として。ごめん。

「でも楽しかったよ。ありがとう。おやすみなさい」


少しドキドキしちゃったよ。

まったく何考えてるんだかわからん。


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